1 知らない男

3/16
前へ
/213ページ
次へ
この男は誰? ベッドから起き上がり、まじまじと男を見る。面識のない男だ。どこで会ったの? あっ、私、服……大丈夫だ。昨夜のワンピース着たままだ。 ほっと息をつくと、「おはようございます」という低い声が聞こえて、心臓が縮んだ。 ベッドの下の男が起きた。 のっそりと起き上がった男がこっちを見て微笑んだ。 朝陽に照らされた目鼻立ちの整った男の顔にドキッとする。 この人、すごいイケメン……。 綺麗な顔に思わず見惚れてしまう。 いや、見惚れている場合ではない。知らない男が私の部屋にいる! これは緊急事態! 今すぐ男と距離を取らなければ。 「あ、あなた誰なんですか? 警察呼びますよ」 ベッドの上のスマホを掴んで逃げるように部屋の隅に駆けた。 「酷いな。帰らないで、そばにいてって俺の手を握って放さなかったくせに」 ありえない! 酔っていても、男性に触られると鳥肌が立って吐き気をもよおすんだから。 「嘘よ!」 「嘘じゃないですよ」 男が不機嫌そうな表情を浮かべ、立ち上がって近づいてくる。 コート越しでも引き締まった体型である事が何となくわかる。背も高くてモデルみたい。 多分、私以外の女性なら、男のカッコよさにドキドキしてときめく状況かもしれない。でも、私は恐怖しかない。
/213ページ

最初のコメントを投稿しよう!

737人が本棚に入れています
本棚に追加