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―他を当たるか。
神社の縁の下はそいつに譲り、俺はなるべく濡れない小径を辿り、バイクカバーの下を目指した。
だが神社の方から行くには、交通量の多い大通りを渡らねばならない。既に日は落ち暗くなり始めているので、人間の駆る車には要注意だ。あのビカビカ光る眼光に射すくめられると、俺たちは視力を著しく制限される。視力を奪われ轢きつぶされて、多くの仲間が殺されている。
たまに残り物を渡される居酒屋脇を通って大通りまで辿り着く。幸い車列が途切れていたので、目を合わせないように走り抜けた。
カバーの下はもう目前だ。植え込みをすり抜け、塀を飛び越えてアパート横のバイクカバーの下に潜り込んだ。
―これで一息つけるか。
そう思ったものの、いつもより肌寒い。水も内側に染みてきているようだ。
―畜生! 一体何だってんだ……。
イラついたが、ふと思い出す。この間、あまり暇だったので、このカバーで爪を研いじまったんだった。
破れたカバーの隙間から入る風と雨は、俺の体を蝕んだが、どうしようもない。疲れ果てて座席の上で眠りこんだ。
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