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ワンルーム
「加奈子ー・・・おぉ・・・」
ある晩 加奈子がしおれていた。
バッグと上着がぶん投げられ、文字通り床に平行に横たわっていた。
「・・・生きてる?」
俺はしゃがみこんで、声をかける。
「・・・14連勤目・・・死んだ・・・もう死んだ・・・」
消えかかる声とともに顔を上げた加奈子の目には、暗闇でもくっきり分かるクマが浮き出ている。とりあえず生存はしているらしい。
「うん。とりあえず着替えろ。」
「ゴメン・・・マジでゴメンね・・・」
「何に対してのゴメンネだ。そりゃ。」
「とりあえずシャワー浴びる・・・」
「おう。」
目の前で服を脱ぎ出すのは慣れている。きっと彼女は今、極限状態だ。
浴室に耳を澄ます。
何日ぶりかのシャワーと、不規則に啜り泣く音が混ざっていた。
「・・・おわっ!?何っ!」
扉を開けた瞬間、俺と鉢合わせになった加奈子は、バスタオルを必死に体に押さえつけた。
「何とはなんだ。」
「び・・・ビックリした・・・まず服を着させて。」
彼女は部屋着に手を伸ばしながら、呟いた。
「るーさん 今日 お願いしようかな・・・」
『るーさん』・・・俺のあだ名を呼んだ加奈子は、久しぶりに顔を赤らめる。
「おう。着替えたら待ってる。」
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