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そんなことを考えているうちに、拓也先輩が校舎から出てきていた。
頭で考えるよりも先に、体が動いた。
「あの、拓也先輩っ!」
必死に呼び止める。
私はここでやることがあるのだ。
「あ、ミサンガの子だー。えっと......如月さん、だっけ?今日出席しなくていいのにきてくれたんだ、ありがとう!」
何か用事?なんて顔を覗き込んでくる先輩に、思わずこの気持ちを諦めることはやめようか、なんて考えが頭に浮かんできて、あわてて振り払った。
先輩は前に進もうとしているのだ。
私も進まないと。
「えっと、今、ミサンガつけてます、か」
ちゃんと動け、私の口。
「うん、つけてるよ」
そう言って見せてきてくれる拓也先輩。
「......失礼します」
そう言って、ミサンガを掴む。
そして、そのまま思いっきり力を込めた。
ブチっ、と音を立ててミサンガは千切れた。
突然のことに拓也先輩は驚いている。
「失礼しました。あの、えっと、そのミサンガ、拓也先輩がダンサーになれますようにって思って編んだので、その、今日切れたのできっと拓也先輩はダンサーになれると思います!」
なんなんだこの意味の分からない言葉は。
語彙力がなさすぎて泣けてくる。
でも、最後まで言わなければ。
「ミサンガが切れると願いが叶うらしいのでっ!きっとダンサーになれます!これからも、これからも頑張ってください......っ!」
早口で捲し立ててダッシュで逃げる。
だって、そうしないと涙が溢れてきそうだったから。
「ねぇ!」
拓也先輩の声。
「ありがとう!!頑張るねー!」
そう言って手を振る先輩が見えた。
家に帰ったら、またミサンガを編もう。
素敵な出会いを願ってみよう。
先輩がこの学校を卒業するなら、私も先輩への思いを卒業しよう。
そうすればきっと、前に進めるから。
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