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赤いスニーカー
俺はばつが悪くなって、そのままリビングから逃げだし、玄関へと向かった。俺のあとを華乃もどきがすがるように追いかける。
それを無視して、玄関で靴をはきかえようとした俺の目に、あるものが飛び込んできた。赤い色のスニーカー。昨日交換したあの赤色のスニーカーが、綺麗な状態で玄関に揃えておいてあった。
「なんで……これが、ここに?」
俺は慌てて自分の部屋に戻り、昨日もらった紙袋をひっくり返した。しかし何も出てこない。
「どうなってるんだよ、これ……」
部屋で呆然と立ち尽くしている俺に、華乃もどきが声をかける。
「正也、どうしたの……?」
俺は華乃もどきを突き飛ばすようにして部屋を出て、玄関へと向かった。
赤色のスニーカーを手に取ると、まじまじとそれをみた。
「あの……私の靴に何かついてるかな?」
俺は驚いて後ろを振り返り、華乃もどきをみた。
「これ……お前の靴か?」
華乃もどきがスカートの裾を引っ張りながらこう答えた。
「うん……そうだけど、それがどうかした?」
ーー君が選んだこの靴は、君の思い残したことを解決してくれる奇跡の靴だ。
昨日、俺は華乃が生き返ることを望んでしまった。その結果の奇跡がこれなのだとしたら、この華乃もどきは一体何者なんだろうか。
「お前、本当に何者なんだよ……」
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