お弁当タイム

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お弁当タイム

青空の下、屋上で弁当を広げる俺たち。華乃もどきがにまにましながら隣で俺を見ている。 「何だよ」 「聞いたよー? 部活のメンバーや先生に、私が本当に西野華乃か、確認したって。みんな心配してたよ、安定の幼馴染みカップルが喧嘩するなんて珍しいって。青天の霹靂(へきれき)だーって言ってたよ?」 特に怒ったりする様子を見せずに、華乃もどきが平然と今朝の聞き込みの様子を話題に出した。 俺は無言で弁当を食う。 「で、偽物だという証拠は出た?」 にこにこしながら聞く、華乃もどき。 俺は少しばつが悪くなって、口を尖らせた。 「出てねえよ。みんな揃いも揃ってお前の肩持ちやがる」 自棄になり白飯をかきこんでいると、華乃もどきが笑った。 「あっはは。だよねえ。だって本物だもん、私。」 涙をぬぐう華乃もどきに、俺はムスッとした視線をやった。 「俺は納得してねえからな。大体、お前との記憶が一切ない中で何を信じろっていうんだよ」 モリモリ弁当を食べる俺。 華乃もどきから笑顔が消える。 無機質な黒い目で、俺を見る華乃もどき。 「でも、違うって証拠はなかったんでしょ?」 「なかったとしても、じゃあ俺がガキの頃から知ってる華乃の記憶が偽物だって保証もないだろ。あの店の店主が何かやったんだ、きっと。あの赤い靴の奇跡が起きてるんだよ、今まさに!」 華乃もどきが堪らずアハハと笑いこける。俺はなんだかすごく恥ずかしくなって、顔に熱がこもった。 「きっと正也、怖い夢でもみたんだよ! それにしても魔法って……!」 けらけらと笑われて、面白くない俺は、上目使いで華乃もどきを物言いたげに睨んだ。 それを見た華乃もどきの笑顔がすぅと消え、真顔で俺の目を見つめた。 「そんな顔しても、ぜーんぜん怖くない。正也の負けだよ」 セミの鳴き声が耳にうるさい。 頬に汗が伝う。 華乃もどきから目をそらせない。ごくりと喉をならして唾を飲んだ。 「お前……本当なんなんだよ」 「華乃だよ、西野華乃。 何度も言ってるじゃん」 華乃もどきの黒目を見つめたまま、俺は反論した。 「……でも、俺の知ってる華乃じゃない……」 華乃もどきが目を見開いたまま、息づかいが感じられる距離まで顔を近づける。 「わーたーしーはー! にーしーのーかーのー!」 しばらく見つめあう俺たち。 これでもかと鳴くセミ。 「じゃあ……俺たちが幼馴染みだった証拠を出せよ。昔の写真とか」 華乃もどきは一瞬止まったあと、近づけた顔を離し、笑顔になった。 「いいよ! アルバムとか見るので良い?」 そんな華乃もどきをみて、俺は噛み締めるように言った。 「……落差激しくね?」
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