迷路の中を通って

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迷路の中を通って

放課後。 夕日が傾く頃、俺と華乃もどきがふたりで歩道を歩いている。ここは、車が通る道路が一車線分しかなくて一方通行が多く、入りくんでいる場所だ。戸建てやマンションが連なり、似た風景が続くから、慣れないとすぐに道に迷ってしまう。 そんななか、華乃もどきは勝手知ったる道と言わんばかりに、俺の目の前を歩き、華乃の家へと向かっている。 鼓笛隊のようにすらりとした足を前に伸ばして、てくてく歩いていく。 その影を踏むようにして、俺が後ろをついていく。 これは俺が提案したことだった。迷うようなら、やっぱり偽物だと言えると思ったからだ。 しかし期待むなしく、華乃もどきは道に迷うことなく、華乃の自宅ーー赤い屋根の一軒屋についた。 華乃もどきは慣れた手つきで鞄から家の鍵を取りだし、玄関のドアを開けた。 「どーぞー?」 ドアを背にし、華乃もどきが中に入るように促す。 「お、おじましまーす……」 俺がなかにはいると、キィッと耳障りな音をたてて、玄関ドアが閉まった。
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