ぜんぶ嘘だったらいいのに

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ぜんぶ嘘だったらいいのに

アルバムを見終えたあと、俺は言葉にならない感情がぐるぐると胸のなかに渦巻いた。ふらふらとリビングを出て、玄関で靴を履き、ドアを開けて華乃の家を出る。 華乃もどきは玄関前まで見送りに出て、ドアを背に俺をまっすぐ見た。 「正也。よーく考えて、思い出して。私のこと。事故のこと。何が本当で何が嘘なのか。ちゃんと考えればわかるはずだよ」 俺は玄関の柵を開き、道路へと出ると、後ろを振り返って、華乃もどきを見た。 「……正直、よくわかんねえ。お前が何者なのか、本当に事故にあったのか。俺が覚えてる華乃が華乃でないなら、俺は……どうしたら良いと思う?」 泣きそうだった。目の前で殺された華乃が、嘘であったならどんなに良いか。今いる場所が、まるで儚い夢の中にいるみたいなのは、きっと、全てが俺の都合が良いように動いているからだ。 「華乃……どっちが本物なんだろうな」 華乃もどきは無表情なまま、真っ黒い目で俺をみて口を開いた。 「だから、私が本物だってば」
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