事件

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神社につくまで走りつづける俺。道路を挟んで向こう側に神社の鳥居が見える。鳥居前には、おしゃれをした華乃がそわそわ待っているのが見えた。道路を隔てて向こう側にいる華乃が、俺の姿に気づき、笑顔で大きく手を振っている。俺は早く華乃のもとへいきたくなって、信号機をにらんだ。 もうすぐ信号が変わるという瞬間、華乃が後ろから見知らぬ男に刃物で刺され、地面に倒れ込むのが見えた。華乃の姿がスローモーションになって俺の目に映る。 それを見た俺は、時が止まったように感じた。目の前で執拗に華乃を刺す男の姿に現実味が感じられなかった。 周囲にいた人間が悲鳴をあげ逃げ惑う中、俺は信号が青に変わっても茫然自失で動けなかった。 信号がチカチカと点滅して、ハッとした俺は、慌てて華乃のもとへと駆けより、男を取り押さえようとつかみかかる。 しばらく取っ組み合いになったが、ある瞬間、俺の脇腹に激痛が走った。脇腹を見ると、どさくさに紛れて男が持っていた包丁で俺の脇腹を刺したのがわかった。地面に倒れ込む俺を滅多ざしにする男。 痛さと混乱の中、俺の意識が段々と遠退いていった。
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