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病院
目が覚めると、俺の目には白い天井が映った。母さんが泣いて俺の手を握り、何かを言っている。父さんは涙をこらえてこちらをみていた。
「早く先生に知らせないと!」
母さんの声が遠くに聞こえる。
ナースコールをならし、大丈夫だからねと言う母さん。
重だるい体の感覚に、生きている実感が持てない俺は、手をゆっくりグーパーしてみせた。腕に痛みが走り、顔を歪ませる俺。
ーーそうだ、俺、刺されたんだった。
「……母さん、ここは?」
涙ながらに手を取り、ここが近所にある病院だと説明する母さん。
「あなた、大ケガをして病院に運ばれたのよ。意識が戻って本当に良かった……。もう丸三日意識がなかったんだから!」
涙をながす母さんをみて、俺は申し訳なく感じた。
ぼんやり泣いている母さんをみていると、華乃が男に刺されている映像がフラッシュバックした。
目の前で飛び散る鮮血。
光る刃物。
刺される華乃。
正直吐きそうだ。
「母さん、華乃は?
華乃はどうなったの?」
一瞬、母さんの動きが止まった。
作ったような微笑みを浮かべ、あなたは助かって良かった……とだけ言って、俺の頭を撫でた。
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