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黒猫
帰り道、ひたすらあてもなく歩く。真っ直ぐ家に帰る気になれなくて、閑静な住宅街を適当にふらふらとさ迷い歩いている。
すると生け垣から目の前に、黒猫がジャンプして着地した。黒猫は側で固まっている俺の姿を確認したあと、にゃーんと鳴く。そしてそそくさと歩道を進んでいった。黒猫は少し離れた距離で俺の方へ振り返り、俺がついてきていないことを確認すると、ついてこいと言わんばかりにまた鳴いた。
俺は黒猫に導かれるまま、複雑にいりくんだ道を歩いていき、細い路地裏へと入る。
建物と建物の間を真っ直ぐに進むと、突き当たりにこじんまりとした西洋風の建物に行き着いた。
にゃーん
猫は慣れた様子でドアでカシャカシャと爪を研ぎ、中に入ろうとしている。
ドアの近くには靴のマークがかかれた看板が備え付けられていた。どうやら靴屋さんのようだ。
黒猫に誘われるまま、俺は静かにドアを開け、一緒に店内へと入っていった。
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