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「そういえばね。
今日会社で、“最近早く帰るようになったけど、もしかして部屋で猫でも飼ってるのか”って聞かれて、“そうだよ”って、嘘ついちゃった」
夕飯にアズの作ってくれたグラタンを食べ、お風呂を済ませた後、私とアズは二人並んでソファーに座り、アズの肩に頭を預けながら、独り言のようにつぶやいた。
「会社の同僚にそう言われた後、アズは華奢だし、青みがかった銀髪で目も青いし、ほんとに猫のロシアンブルーみたいだなぁって思っちゃった」
「ウソついたの?ふふっ、麻由香はいけない子だ」
アズは、まるで子供をたしなめる親のように、私の頭に自分の頭を軽くぶつけた。
「だって、みんなが勝手にアズのこと猫だって勘違いしてたわけだし、私も恥ずかしくてアズが人間の女の子だなんて、言えなかったんだもん」
私は会社では絶対見せないような甘えた仕草で、アズの首に手を回した。
「そう?でもウソはダメだよ。
で、麻由香はもう一つ、会社でウソをついてるな」
アズはニヤッと笑ってそう言いながら、私にイジワルなキスをした。
「アズが猫なんじゃなくて、麻由香がネコ…、なんでしょ?」
耳元でそう囁かれ、私は今夜も蕩けるように落ちていった。
そう。
どうやら猫、もとい、ネコなのは、私だったみたいだ。
了
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