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検閲
「上田、出来上がったのか?三山との合作」
国語の教科担任で、個人名義の文化祭の出品を許可してくれた蓮田先生が、声を掛けてくる。
「無事に終わりました」
さっきまでの結花との対立を先生に隠して、少ない30部を製本していく。先生は、四十肩なのか、軽く肩を上下させてから、勝手に製本された一部を読み始めた。個人名義の出品を許可を出した教師に、「検閲」する権利くらいあるだろう。30部を仕上げることに集中した。
「これ、絵が先にあるのか?」
蓮田先生は、眼鏡の鼻宛てを押さえて呟く。
「絵の方が負担が大きいので、作詞の曲先みたいなイメージで、『絵先』です」
蓮田先生は今度は顎の髭の剃り跡を撫でて、
「最後は上手いけど完全に引きずられてるな…絵に。いや、絵に食われてる、詩が」
今日、二度目だ。正論で斬り捨てられるのは。
「それでも、投げ出す訳にはいかないので」
「三山に切られたと腐るか、三山から卒業して自分の世界が始まると思うか、上田次第だぞ」
ラスト1ページを捲り終わると、蓮田先生は私と結花の対立を見抜いてるような講評を残して、印刷室を去って行った。
私次第…。塗りが途中のままの女神に付けた詩をもう一度読み返した。
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