プロローグ

2/4
前へ
/122ページ
次へ
名古屋に本社を構えるとある大手興業のビルの一室で、ある大規模な殺人計画が一人の初老男性に伝わろうとしている。 ここは密談をする為の専用部屋で、地上から約五十メートルに位置し、ここに辿り着くまでにはねずみでも通る事が難しいセキュリティーを通り抜かなければならず、この会社の社長とその社長の入室許可を得られた者以外はまず立ち入る事は出来ない。 その唯一と言っても良いこの部屋の出入りが自由に出来る人間がこの山鍋興業社長、山鍋清彦だ。 清彦は人の能力を全て自分で作った公式を使用して数値化し、それがある基準値に達しているかどうかを査定し、この隠れ家的部屋に足を踏み入れるに値するべき人間か否かを決めている。 その清彦の基準値に達する事は難しく、有名国立大学卒の人間ですらなかなかそれに値する人間は出現せず、歴代でこの部屋に入れた人間は片手で数えられる程しかいない。 しかしそんな中、数少ない清彦に入室を認められた者の中でもずば抜けた最高点を獲得した者が最近出現した。 その者の名は、犯罪コーディネーター兼プランナーのレントだ。 レントの仕事は強盗から殺人までのあらゆる犯罪の計画と実行を依頼者に代わって、代行する事だ。 そして今日は待ちに待ったレントとの密談の日だ。 当然この隠れ家が利用されている。 数週間前からこの日を待ち望んだ清彦がレントの持参した殺人計画書を高級本革使用のイタリア製ソファーに座り、目を凝らしながら、興奮気味に一読している。 「すっ・・・・・素晴らしい。これほど鳥肌が立ったのは生まれて初めてだ。やはり高い金を払ってでも君に依頼して正解だったな」 「お褒めのお言葉は大変光栄なのですが、その言葉はこの計画が無事に成功するまで取っておいて下さい。また再度確認で恐縮ですが、依頼料は前金としてこの計画の成功有無にかかわらず一億円支払って頂きます。また、もしこの計画が成功したのならば成功報酬として犯行終了後に追加で三億円支払って頂きます。宜しいですね」 レントも清彦の向かえ側の高級ソファーに座っているが、清彦から出された老舗和菓子店甲風の高級饅頭と濃厚な黄緑色をした熱い緑茶にまだ手を付けてはいない。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加