第一章 本意

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第一章 本意

眩い光が草木やビルを照らす皐月の早朝の道。 学び舎を目指している紺色のブレザーと灰色と黒色を基調としたチェック柄のスカートを着た二人の女達がいつもと変わらず話が弾んでいるようだ。 「そう言えば、昨日、友達から聞いたんだけど今日から新しく転校生が来るらしいね」 「そうらしいね。なんか噂立ってたね。亜理紗は男の子か女の子かどっちが良い?」 「男かなー。それも優しくてカッコイイ人。今クラスの男子にそんなのいないしね」 「そんな過度な期待しちゃ駄目だよ」 「そういう妙子はどっちなの?」 「私はどっちかというと女の子かな。また友達を増やしたいしね」 「ふーん」 妙子と亜理紗の友好関係は中学一年の時からである。 妙子は中学入学当初、大人しい性格で、口数も少なく友達も少なかった。 しかし、そんな妙子に学年で必ず一人はいるであろう所謂リーダー的な存在で勉強も運動も成績抜群の亜理紗が最初に声を掛けて来たのだ。 妙子は嬉しかった。 「こんな大人しい自分に大谷さんみたいな可愛くて、クラスの中心人物が声を掛けてくれるなんて」と。 それ以来二人は膠漆となり、また亜理紗の社交的な性格の影響を受け妙子も性格が様変わりし、友達も増えた。 しかし、どんなに友達が増えても妙子にとって亜理紗は一番の親友だ。 亜理紗もそうだ。 この二人の関係はこの四年間で揺るぎないものとなり、これからもその友情は更に深まる事だろう。
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