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東京都港区にある私立秀明館高校は都内でも有数な進学校だ。
その中でも大谷亜理紗の成績は入学以来常にトップクラスで、学校の期待株になっている。
「おはよう」
教室で妙子と談笑している亜理紗に声を掛けて来たのはルックス、身長、成績、三拍子揃って中の中の半籐貴新だ。
この空間には机の上で腕を交差させ顔をうつ伏せにしている者達、椅子を向かいあって話している者達、携帯電話を弄っている者達と様々だ。
「あっ、おはよう」
半籐と亜理紗の家は五十メートル程しか離れていなく、幼い頃から家族ぐるみで付き合っている、所謂仲の良い幼馴染である。
今、半藤がこの場にいられるのは受験生にもかかわらず怠惰に冬休みを過ごしていたが、流石に危機感を感じ、年明けからエンジンを掛け、必死に追い込み、奇跡的に同じ高校に受かったからだ。
「今日から来る転校生って一体どんな奴だろうな?」
「丁度その事について妙子と登校中話していたんだけど、あんたはどんな人に来て欲しいの?」
「俺は可愛い女の子かな」
「何。目の前に美少女二人がいるのに、まだ欲しい訳?」
「亜理紗は所謂、活発タイプでしょ。秋山さんは、大人しめタイプ。俺は清爽で気品ある女に憧れているの」
「そんな人、来る訳ないわよ」
「分かんないよ。この学校そこそこ偏差値が高い私立だし、お金持ちのお嬢さんだって来る可能性全然あるでしょ。例えば帰国子女とか。そうなったら早速アタックしてみよ」
「全く、あんたって人は。だからモテないのよ。妙子、少し引いているわよ」
「秋山さんはそんな人じゃないでしょ」
「うっ、うん」
「しっし、あんたはもうあっちに行って」
「分かったよ。秋山さん、邪魔して悪かったね」
そう言うと半籐は妙子達を背に歩き出し、直ぐに近くにいた男に声を掛けた。
「御免ね、妙子。悪い奴じゃないんだけど」
「うっ、うん、そうだね」
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