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昼休み。
男達は売り切れる前にとパンやジュースを買い求めに購買に急ぐ者や、黙々と一人で持参した弁当を食す者が大半という普段の光景だ。
女達は普段は自分の机を移動させ、それぞれ仲の良い者達がグループを作り、自分で早起きして作った手作り弁当を広げ自慢しながら食す者が大半だが、今日はいつもと違う光景が繰り広げられている。
淑女達がプリンスの周りを取り囲んでいるのだ。そして、その中心には亜理紗がいる。
「御神君って前は何処に住んでいたの?」
「愛知県の名古屋市です」
「へえー、じゃあ元々都会に住んでいたんだ」
「いえ、俺が住んでいたのは瑞穂区という田舎の方なので、東京に来て今まで体験した事のない大都に吃驚しています」
「そうなの?じゃあ、今度私達が東京案内してあげる」
「是非、宜しくお願いします」
普段から亜理紗達と遠縁的なグループは陰から淑女達に嫉妬している。
「御神君のお父さんは何の仕事をしているの?」
「エンジニアです」
「へぇー、そうなんだ」
女王の質問攻めはまだ終わらない。
「御神君って、恋人はいるの?」
恐れを知らない女王が恐らくクラスの女達全員が気になるであろう質問を初日で投げつけた。
「いませんよ。自分でもモテない人間だと自覚していますから」
「またまたそんな事を言って。もうこんなにモテているじゃん」
「直ぐに皆さん俺の元から離れていきますよ」
「・・・・・御神君って意外と面白い人なのね」
「そうですかね」
「ああ、申し遅れたけど、私、大谷亜理紗と言って、一応生徒会長をやっているわ。でこの子が秋山妙子。でもってこっちが・・・・・」
「秋山さんでしたよね。これから宜しくお願いします」
目を合わせられないでいる寧静女に向かって、プリンスが少し微笑んで言った。
「はっ、はい」
女は目線を逸らしてその言葉を口にするだけで精一杯だった。
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