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「そうだ、母親は無事に家へ着いて人形を袋へいれると来た道を引き返して豪へと急いだ。
でも、帰ると子供が居ない。母親はもう一度外へ出て子供を必死で探した。その動きは、空から獲物を狙う奴等には格好の獲物となった。
女の子も道に迷っていたからな。最初は母親、そして子供・・・」
山岸は、3本目の缶ビールを飲み出した。
「戦争の悲劇だな。きっとその人形に早く会いたくて母親の後を追ったんだろう。でも悔しいな!」
雅博は、やるせない思いをどうする事も出来ない。
「米軍は沖縄へ上陸した時に、ディズニーマーチを歌いながら上陸したそうだ。」
山岸もやるせない思いをどうする事も出来ない。
「戦争の悪は子供が犠牲と成る事だ。誰だって分かる事なのにな。」
雅博はそう言うと、目頭が熱くなった。
「野中、明日そこへ行って供養しよう。近くに親子の供養塔があるはずだ。」
山岸の提案は、ふたりの心を落ち着かせた。
「ありがとう山岸。」
翌日、雅博は山岸と一緒に供養塔へ行った。
少女と出会った場所から僅かな距離である。
走っている時は、社には気付いていたが・・・
少女と母親の供養塔はその社の隣にあった。
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