ハンカチ

14/34
前へ
/34ページ
次へ
「何が食べたい?」 雅博は芽衣へ尋ねた。 「そうね、寒いから鍋物が良いかな。」 芽衣は、コートのポケットから手を出すと、両手を擦った。 パブ、居酒屋が連なっている通を抜けると大きな看板に、鍋、ほうとうと書かれた文字が目にはいった。 「此処にしよう。」 雅博はそう言うと、芽衣をエスコートして店の中へ入った。 「いらっしゃい!おふたりさんですか?」 あまりに威勢の良い大きな声で驚いたが、 雅博は軽く頷くと、四人が座れるテーブルへ案内された。 芽衣は座るなりメニューを広げると、 「ほうとう鍋があるね。これにしましょう!」 「僕らが甲州人とは知らないだろうから、じっくりと味見だね。」 雅博はそう言うと、店員を呼んで、ほうとう鍋を注文した。 「寮生活には慣れた?楽しい?」 雅博はそう言うと、運ばれて来たお茶を少し飲んだ。 「寮は団体生活でしよ。決められた時間で行動するのにちょっと初めは抵抗があったけど、ずぼらな私には丁度良いのかもって、最近はそんな風に思うわ。」 芽衣は雅博から視線を外さずに淡々と答えた。 「メイちゃん変わったね。」 「何処が?何が変わったかしら?」 雅博は何も言わずに芽衣に微笑み掛ける。 「とても綺麗だよ。」
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加