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「野中君は変わらないね。」
そう言うと芽衣は頬杖をついて雅博を見詰めた。
「お待たせしました。熱いのでお気をつ付け下さい。ごゆっくりどうぞ。」
店員はそう言うとレシートを筒にいれて立ち去った、
待ってましたとばかりに、ふたりは食べ始めた。
ひと口、ふた口。
ふたりは顔を見合わせると同時に言った。
「美味しい!」
久し振りのほうとうの味に満足して店を出ると、五番街をそぞろ歩き、一軒のパブに入った。
カウンターに並んで座ると、薄い水割りを飲みながら、高校時代の思い出話しで盛り上がった。
「ちょっと化粧直して来るね。」
芽衣は、そう言うと椅子から立ち上がって化粧室へと背を向けて歩いて行く。
その後ろ姿に雅博は、大人の女の色気を感じた。
彼女が離れないように、しっかりと気持ちを繋げなければ。
それは彼女へ、今の自分の気持ちを伝える事である。
化粧直しから戻ると芽衣は、
「そろそろ帰らないと門限に間に合わない。」
そう言いながら両手をハンカチで拭いている。
「野中君、このハンカチ覚えてる?付き合って初めてのクリスマスに、私が貴方にプレゼントしたハンカチ。ペアでお揃いのハンカチ、大事に持ってる?」
雅博はすぐさま思い出したが、そのハンカチは、あの時……
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