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「金持ちの有り余る金を運用する手助けをして何が楽しい!詐欺まがいの仕事だ!」
雅博は、吐き捨てる様に芽衣へ言った。
それ以来、芽衣は雅博と口を聞かなくなり、夫婦仲は冷え込んだ。
雅博は、芽衣へ詫びたが、仕事への復帰は許さなかった。
年明けの2月。
芽衣は雅博へ離婚届を差し出した。
さすがに離婚となると雅博はビックリしたが、芽衣の意志は固く、どうしようもなかった。
問題は梨沙である。
雅博にとって梨沙は生き甲斐であり、彼女の顔を見るだけで癒された。
梨沙は女の娘である。芽衣へついて行く事は火を見るより明らかであった。
ところが、
「お父さんと一緒に居たい。」
梨沙のこのひと言で、彼女の親権は雅博のものとなった。
芽衣は、梨沙の気持ちが分からなかったが、仕事への情熱はさらに強くなり、住み慣れたマンションを去った。
春になって梨沙は、ランドセルを背負って小学校へ通った。
父子家庭と言ったハンディを担った娘。
雅博は、出来る限り早く帰宅して梨沙を安心させる努力をしたり、休日も梨沙と一緒に過ごした。
会社では、随分と付き合いの悪い奴と思われたが、気にしない事にした。
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