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今から40年前の話である。
野中雅博は、横浜市内の某有名私大の2年生。
山梨県の出身で、その大学の学生寮で暮らしていた。
その出来事は、その年の初夏に起こった。
雅博は、大学の陸上部に所属する中距離ランナーである。
中距離は陸上競技のランではいちばん難しく、筋肉の作り方は魚に例えると、白身と赤身をバランス良く鍛えなければ成らない。
短距離走ならばの赤身、長距離走ならば白身である。
学校の東南部には、練習には好都合の丘陵地がひらけている。
彼は、さほどきつくはないアップダウンコースを気持ち良く流して走っていた。
いつもの小さな社の横を通り、石畳の階段を登って行く。
左側はちょっとした崖で、雨水や地下水が下へ下へと流れ落ちて、小さな川となって流れている。
右側は、樹木が生い茂っている雑木林である。
手入れはされていないので、雑草が生い茂り見通す事は出来ないが、季節の移り変りを感じさせてくれる。
季節は、もう直ぐ梅雨入り。
雅博は、今のうちに出来るだけ体力を付けようと、この石畳の階段を含めたコースを5周する。
夕方5時から約1時間半の自主トレーニングである。
後、1周。
運動場の脇を走り抜けて人1人が通れる砂利道を抜ければ社が見える。
そして社の横を通り、石畳の階段を数段上がった。
その時だった!
突然、右側の雑木林の藪から、何がが飛び降りて来て雅博の前に立ちふさがった。
びっくりする暇などなかったが、今、起きている現実は無視出来ない。
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