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佳陽は涙を溜めていたか、声を出して泣き出した。
「佳陽君、これが仕事だ。こうした経験を積んで皆プロに成るんだよ。」
佳陽が雅博に好意を持った瞬間だった。
雅博にとって佳陽は直属の部下ではないが、
同じオフィスに居る。
会社へ出勤すれば、佳陽の元気な挨拶は気持ちが良い。
佳陽は長身でスレンダー。髪は仕事中は束ねているが、解すと癖のないさらさら髪で、目鼻立ちもはっきりとした美人系である。
雅博の前妻、芽衣に似ているが、性格はおっとりとしていて、芽衣とは正反対である。
会社内でも彼女のファンは多いそうだが、なかなか攻略に苦慮しているようである。
あれから仕事のミスはない。
仕事が取り分け遅くもないが早くもない。
とにかく行動はゆっくりで、仕事では目立たない。
そんなところも若い男性社員には魅力的に映るのだろう。
噂によるとなかなか彼女とデートの確約はとれない様である。
そんな佳陽が雅博へアプローチして来たのは、北風が冷たく感じる師走。
忘年会の日だった。
毎年恒例の中華街の飯店で催された。
総勢13名の年に一度の忘年会は、有難迷惑なイベントではあるが、付き合いという社会人の勤めである。
内訳は、男性が9名、女性が4名。
いつもの様に賑やかに始まった。終わるのは八時。
九時前には梨沙と会話が出来る。
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