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ビールをジョッキーに一杯。
ゆっくり飲んで部下の余興に笑顔でいれば良い。
とにかく梨沙が家でひとりで居る時間を出来るだけ少なくしたい。
その気持ちが雅博に仕事をてきぱきと効率良く片付ける原動力となった。
仕事の出来る奴。
上層部からそう評価された。
佳陽は、社会人になって初めての忘年会。
独身の先輩社員の酒癖の悪さに呆気にとらわれていたようだが、
然り気無くかわす手法を、先輩女子社員から手解きを受けている様である。
時間になった!
雅博は小走りで駅へ急いだ。
「課長、ちょっと待って下さい。」
雅博は後ろを振り返って声のする方へ目を向けると、
声の主は佳陽だった。
「課長、ご一緒して良いですか?私、日吉ですから。」
東横線の日吉。雅博と同じ電車である。
「皆とカラオケ行かないのか?」
雅博は、駅の構内へ入ると佳陽へ言った。
「私、これから彼氏と会うんです。」
そう言うと佳陽はコートのポケットから両手を出すと、ふーっと息を吹き掛けて擦り合わせた。
「そうか、それは楽しみだな。」
「課長は好い人居るんですか?」
雅博は返事に困った。
下手な事は言えない。
直ぐに社内で噂になる可能性があるからである。
「佳陽君の想像に任せるよ。」
雅博はそう言うと苦笑いした。シャイな上司を装った。
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