ハンカチ

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雅博は、そのものが獣ではなく、人である事をまず認識した。 少女・・・ 小学校の高学年、いや中学校へ通い出したぐらいの年頃・・・ 瞳は髪の毛に隠されていて表情は分からないが、雅博は背筋に冷たいものを感じた。 そして、彼女はうつむいたままで両手を広げて、雅博の行く手を阻んでいる。 雅博は、体を動かそうとするが動けない。そして、言葉も発せられない。 金縛り・・・ これが金縛りと言う奴なのか!そんな風に思う余裕はまだあったが、やはり段々と恐怖感は増して来た。 何なんだ! そう思った時、急に体が軽くなり手足の自由が戻った。 少女は、そっと端に寄り雅博に道を譲った。 雅博は、恐る恐る少女の脇をすり抜けた。 何気なく少女の顔を確かめようと、その面立ちを見たが、やはり前髪が瞳を隠していた。 脚はある。絣のタポタポのズボンと茶色の靴を履いている。 シャツはベージュで黒の肩がけを羽織っている。 お化け、幽霊ではないだろうが、今時の服装ではない。 きっと友達と隠れん坊で遊んでいるうちに迷ったのだろう。そう思い直して走りだそうした時の事である。 かすかではあるが、すすり泣く声が聞こえた。 どうした? 友達とはぐれたの? そんな言葉を思い付いたが、話し掛ける事が出来ない。
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