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雅博は、とっさにポーチバックからまだ使っていないハンカチを取り出して、
「これ、使いなさい。」
そう言うと右手を差し伸ばした。
少女は無言でそのハンカチを受け取った。
雅博は、少女へ微笑みかけると石段を駆け出した。
二段・・・三段。
時間にしたら3、4秒。
雅博は何気なく後ろを振替って、少女を確認したが、
居ない!
少女の姿は見当たらなかった。
慌てて引き返したが、僅かな距離しか少女とは離れていない。
雑木林に隠れたり出来る時間ではない。
まさか崖に!
崖と言っても落ちたら死んでしまう様な崖ではない。
バランス感覚の良い人ならば、小走りで降りられるだろうが、物音がするはずである。
とにかくこの場から立ち去ろう!
雅博は、背中に冷たいものを再び感じながらいつもより速いスピードで寮へと走った。
寮へ着いて自分の部屋に入ると、直ぐに汗だくの短パンとシャツを脱ぐとシャワーを浴びた。
やはり先程の不思議な体験が頭から離れない。
幸いだった事は、少女の瞳を見ていない事だった。
顔が分からなかった事で恐怖感は半減した。
もし、はっきりと少女の顔を見ていたら・・・
そんな事を考えながらベッドへ横たわり、瞳を閉じていると、いつの間にか眠っていた。
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