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 絞殺であると、一目見て分かった。首にはロープか何かで絞められた跡がくっきりと残っており、鬱血した顔は醜く変貌していた。天井へ向けられた瞳は濁り、口からは舌がだらんと垂れていた。  三嶋と掛川は、ゆっくりと、顔を見合わせた。互いに、玩具を取り上げられた子供のような情けない表情を見ることになった。 「お、落ち着こうじゃないか」  先に口を開いたのは掛川だった。 「そ、そうだな、落ち着こう……」三嶋も取り(つくろ)って応える。「俺もお前も、キル子を殺す機会はなかった……そうだな、さっき珈琲を淹れに行ったときにも、二階に行ってキル子を絞殺する時間的余裕はなかったよな……」 「もちろんさ、私は確かに淹れたての珈琲を持って戻ったのだからね……。となると、可能性はひとつしかあるまい?」 「俺達の他に、誰かいるんだな?」 「この家の住人に違いない。はじめから潜んでいたのだ!」  掛川は戸口の方へ振り返った。其処に見えない敵でもいるかのような振る舞いだった。だが三嶋も、同じくそちらを睨み据えた。 「俺達に……部外者に、敵意を持っているんだな。こんな変な場所に好んで住むような奴だ……人間嫌いで、頭がおかしいんだな!」 「長泉くんを殺害したのもそいつの仕業だろう。うむ……なにも私や裾野くんがいた部屋からだけではない、裏手に面したあの廊下……あそこの窓からだって長泉くんを狙い撃ちできたのだ。あのときの探索も完全じゃなかった。巧妙に隠れながら、長泉くんと、そしてキル子くんをも殺したのだ……キル子くんは眠っていたのだろうか? いずれにせよ、声を出せないように絞殺したのだな……」 「探し出してやろう。二対一だぜ、タネが知れれば袋の鼠だ。どうせ家からは出られない……探し出して、引っ括ってやる」 「うむ、徹底的に、だね。二人いれば、入れ違い式にこちらの目をかいくぐることもできない。二階の奥から始めて、追い詰めてやろうじゃないか」  二人は、自分達でも不思議なくらい激情に駆られていた。そして憑かれたような熱心さで、家の中を虱潰(しらみつぶ)しにしていった……。
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