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温かいものを飲んで一息つくと、いくらか落ち着いた。そこで三嶋は、掛川が最前からニヤニヤと自分を見詰めていることに気が付いた。
「何だ」
「ふふ……ひとつ素敵な提案があってね」
その視線が、天井に向けられた。
「どうだろう、熊じゃあるまいが……私と君とで、キル子くんを食べてしまうというのは」
この上なく下種な笑み。眼鏡の奥の瞳まで、異様な光を宿している。
三嶋はそれに、まったく同じ種類の笑みを返した。
「素晴らしい提案だな」
「ほう! 良かったよ。ひょっとすると君は乗らずに、私を叱るかもしれんと思っていたのだ」
「まさか。俺の方こそ、お前がそういうことに感心があるとは意外だったよ」
「ふふふ、互いに要らない誤解があったようだね? しかしこういう場合、私達のような健全な男子であれば考えはひとつだろうに」
「ああ。それにキル子の服装、山登りだってのにタンクトップにショートパンツだなんて、馬鹿にしてるじゃないか。あれは誘ってるぜ?」
「間違いないよ、後期クイーン的問題だってそれには疑問を挟めはしまい。彼女は淫乱なのだとね」
「行くか? 時を見計らう必要もないだろう?」
「まったくだ。君とこんなに気が合うとは感激だな!」
共通の情熱に突き動かされ、二人は仲良く並んで歩き始めた。肩でも組みかねない意気投合ぶりであった。
「さっきから苛々して仕様がなかったからな、発散したいと考えてたんだ」
「素晴らしい。それに二人の男から一晩凌辱され続ければ、彼女のヒステリーも鎮まって少しはしおらしくなるだろう。ここは先輩としてひとつ、躾をしてやる良い機会だよ」
「ははははは……」
「ふふふふふ……」
二人は階段を上がり終えると、手前の扉から開けていくことにした。するとひとつ目で当たりを引いた。お誂え向きにも、キル子は寝室にこもっていたのだった。
「やぁキル子、お前も随分と気が利くじゃな――」
「キル子くん、君を治療してやる良い方法が――」
ベッドに歩み寄り、そこで二人は唐突に呆けた。高まっていた気分が、一挙に転落して打ち砕かれた。
キル子は手足を投げ出した格好で、死んでいた。
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