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006.待ちあわせ場所(2022.8.6 お題「石」)
柱に凭れたくなり、広告のない面にまわろうとしたら元恋人がいた。慌てて元の位置に戻る。このひとも誰かを待っているのだろうか。そういえば、このひととの待ちあわせもここが定番だったなとおもった。蹴って遊んでいた小石を見失うみたいにして消滅したこのひととの恋は、間違いもなければ正解もなく、決定的ななにかが足りていなかった。たぶん、ほんとうの愛みたいなものが。
改札からひとびとが溢れだす。こちらに気づいたあなたが手を振ってくれた。その後ろから元恋人の相手らしきひとも駆け寄ってくる。
わたしたちみたいな体たらくが、誰かとともに過ごせる保証はないけれど。
せめて今だけでも、あなたを大事にできたらいいなとおもう。
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