Chapter 9

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 自分だけ乱れていくのが嫌でエリのズボンに手を伸ばす。だけどそれは拒まれた。 「なんで……?」  まだシャツも脱いでいない男を快感に潤む目で睨むと苦笑が返ってきた。 「今触られると、たぶん、もたないから」  それより、と言い、エリは体をずらし、止める間もなく晴義の硬くなったものを口に含んだ。 「えっ、エリっ……! そこはッ――」  しなくていいと言おうとしたが、見上げてくる欲情に満ちた目に息を呑む。こんな雄の目もするのかと、ゾクっとするものが背中を駆け上がった。  自分がリードするはずだったのに、という考えは熱い口内に包まれ、あっという間に溶かされた。 「ん……ぁっ……あっ!」  稚拙で勢い任せの口使いは予想がつかないだけに晴義を追い詰めた。ちろちろとくすぐったいぐらい優しく舐められたかと思ったら、尖らせた舌先で割れ目をいじられ、強烈な刺激に腰が跳ねる。 「ッ……エリ、エリっ! 待って……っ」  自分こそもたないと焦り、夢中になっている男の顔を上げさせた。 「あれ……持ってきて」  イーゼルのほうを指さす。 「ココナッツオイル、だろう?」 「うん……あ、そっか」  すぐに理解したらしく、ベッドから下りた。その短い間だけでも晴義は大きく息を吸って自身を落ち着かせようとした。 「絵の具に混ぜようと思って買ったんだけど、使えるの?」  小瓶を手にエリが戻ってくる。  ラベルの字を確認して晴義は頷いた。ローション代わりにもなるオイルだ。 「僕がやるから」 「……言うと思ったよ」  晴義は顔をしかめ、伸ばそうとした手をひっこめる。エリは満足そうに笑い、服を脱ぎ捨てた。  全身に程よくついた筋肉と完全に勃ち上がった逞しいものに目を奪われているうちに脚を大きく割られ、間に陣取られる。 「エリ……こっち」  せめてずっと見られないように顔を引き寄せてキスをねだった。それに応えながらエリは濡れた指を狭間に這わせ、ゆっくりと中に沈めた。オイルを馴染ませるように円を描き、重ねた唇の間から熱い吐息がこぼれる。
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