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ビビりな友達と心霊スポット行ってみた
「なぁ、チラッと入り口だけ見て帰る約束だったよな……?」
「何言ってんだよ。ここまで来たら奥まで散策するだろ」
昼間であれば、頼朝にゆかりのある史跡として地元で有名な観光スポットであったこの場所。
だが、現在の時刻は深夜1時を回るところだった。もちろん街灯なんてものはなく、懐中電灯を照らせばなんとかこの先に道が続いているとわかる。
頭のおかしいコイツは、今からここを進むのだと言う。
このおどろおどろしい雰囲気だけで、素材としてはもう十分だと思う。だけど行きたくないと駄々をこねたところで、無駄な抵抗なのもわかっている。
ひとり置き去りにされるほうが怖い。
結局、拒否なんてできず俺は素直に付き従うしかなかった。
歩きながら手足が震え、懐中電灯の光があちこちに揺れて一点に定まらない。
「ひっ!」
パキッと枝が折れる音にびっくりして、俺は夏央の腕に思いっきりしがみついた。
「自分で踏んだくせに何ビビってんだよ」
「いや、だって……」
面白そうにニヤニヤと笑みを向ける夏央は、きっと「ここは使えるぞ」としか思っていないんだろう。俺がビビりまくっている声や映像、つまり撮れ高を一瞬たりとも見逃さないように、ゴープロを持つ手に神経が集中している。
舗装はされているが、地面はぬかるんでいて歩きにくい。狭い道が続き、懐中電灯を持つ役目の俺が先頭を歩く形になる。
霊的なものに出くわしたらどうしよう。
そんなもの信じないし、心霊体験なんて今までにないし、霊感の類も一切持ち合わせていないのにも関わらず、心臓が痛いくらいに激しく拍動する。
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