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「お、着いたな」
足を止めて光を照らすと、そこには目的の洞窟があった。すぐ近くには数十体の地蔵が乱雑に並んでいる。苔むしてボロボロで、でも何か意思を持っていそうな表情に恐怖する。
ぴちゃぴちゃと水が滴り落ちる音が闇に響いている。なんとも気味が悪い。
「この奥にもお地蔵さんいるんだな。もうちょっとのぞいてみるか」
「いや、も、もう無理だよ夏央! 戻ろう!」
俺は限界だった。
洞窟の中へと進もうとする夏央の腕を引き寄せて、来た道へ足を向ける。
「はぁ? これからだってのに。これじゃ視聴者は納得しないぞ」
「いやいやいや! まずこんな状況、俺が納得しない!」
言い合っていると、懐中電灯をツルンと手から滑らせてしまった。そのまま足元に落ちて、無機質な音を立てる。
すぐに拾い上げたいのに、体が硬直して動かない。辛うじて手汗をTシャツの裾で拭くのが精一杯だった。
そして、自然と懐中電灯が照らす物に視線が誘導される。そこにあるのは、1体の小さな地蔵。片目がこちらを見つめている。
もう片方の目がなぜか見当たらない。
だがよく目を凝らすと、その理由がわかった。
頭部が半分、ない。
「ぎゃああああああ」
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