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「今回の洞窟の動画も好評だなぁ」
先日のロケの動画は、歴代最速で1万回再生を突破していた。俺が奇声を発しながら洞窟から全力で逃げるところが反響を呼んだらしい。恥もプライドも捨てた醜態を全世界に発信するなんて、夏央のためじゃなかったら死んでもごめんだ。
視聴者からのコメントを丁寧に返信しながら、夏央は上機嫌に不適な笑みを浮かべている。
俺の気持ちも知らないで……、いや知っているのか。高校時代にそれとなく伝えたことはあるから。
「『良くんの泣きそうな顔がかわいい』だって。よかったな、褒められてるぞ、良?」
「いや、嬉しくねーし……」
「『褒められて照れてます』って返信しといたわ」
照れてねぇよ。お前の思考回路どうなってんだよ。いちいち返すのも面倒なので、俺は黙々と昼飯用の焼きそばを作る。
家事が全くできない夏央のために、俺はよくこうして世話を焼く。コイツはゴミ出しの曜日すら把握していない、自由奔放なダメ人間なのだ。
「……そうだ。ずっと良を連れて行きたかった心霊スポットがあるんだけどさ、来週末、空いてるよな?」
「えっ、また……?」
キャベツを切る手が止まる。
一昨日行ったばかりで、ちょっと頻度おかしくないか?
俺の精神状態はどうでもよくて、それよりも人気配信者になることが大事なのか?
あの時告白なんてしなければ、こんな都合のいいように使われることはなかったのか?
ペロリと焼きそばを平らげ、テーブルに食器を放置したまま夏央は再びパソコンの前に座る。
こんなろくでなしにずっと、もう何年も惚れてる俺は、本当どうかしてるよなぁ……。
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