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「なぁ、どこ行くんだよ? もう教えろよ」
車を走らせること30分。
深夜の国道は空いていて、逆にどこまで遠くに行くのかと不安な気持ちにもなる。
「だから、秘密だって」
目的地に着いてもいないのに、すでに俺の恐怖ゲージは7割ほどまで上がっていた。たまに現れる対向車のライトにすらビクッとしてしまうほどだ。
気付けば国道から逸れて、一車線の道を走っていた。段々とくねくねしたカーブも多くなる。信号もなくなり、山道に入ったのがわかった。俺たち以外誰もいないんじゃないかと錯覚するような、孤独を感じさせる暗闇が広がっている。
「ちょ、もう怖いって! ほんと、勘弁してよ夏央。帰りたい」
俺の弱気な声と間抜けな表情は、車内に設置されたゴープロにしっかりとキャッチされている。
「うん。この峠なんだけどさ、ブラック企業で長時間働かされた新卒の社員がな、深夜残業の挙句に血迷って……」
「急な解説やめろって!」
もしかして自殺者が後を絶たないような心霊スポットなのだろうか。そんなところ、絶対に現世に未練しかない幽霊の巣窟じゃないか。
いや、幽霊なんて信じてないけど。
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