大根役者

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「ねえ。あなたは大根でしょう?生活費はどうするのよ」 「旦那さんは、毎月、生活費として40万円を送ってくれると言ってました。でも、もちろん僕も働きます。」 「働くって?仕事できるの?大根なのに」 「僕、小説家なんです。」 「小説家?!」 「ええ。主に、野菜が主人公のミステリー小説を書いてます。」 「野菜が主人公のミステリーですって?」 大根は、私の肩を軽くマッサージしながら説明した。 「例えば、ある夜、八つ裂きにされた茄子の遺体が食卓テーブルの皿の上で発見される。第一発見者は茄子の遺体の隣に添えられたパセリ探偵だよ。パセリ探偵は、茄子の遺体を一目見て、これは事件の匂いがすると感じた。なぜなら茄子の遺体の上には、これまたバラバラに切り刻まれた豚の肉片が散らばっていたからだ。」 「あの…わかったわ。だけどちょっと、今、私、そんな話、聞きたくないわ。だって、それどころじゃないんですもの。本当に、夫は離婚したいって、そう言ってたの?」 「ええ。確かに。離婚したいので後はよろしく頼むと、だから、あなたを心身ともに支えてほしいと、僕は旦那さまからお願いされました。」 大根は、まだ私の肩をマッサージしていたので、その手を払いのけて私は叫んだ。 「ちょっと、それが本当なら、こんなのん気なことしてる場合じゃないでしょう?」 大根は、静かに語った。 「落ち着いて下さい。今、僕たちにできることは、現実を見つめることです。旦那様は、もう二度と、この家には戻って来ません。この家も土地も、車も何もかも、あなたの名義に書き換える手続きは済んでいるのです。毎月の生活費の他に、慰謝料として3億円相当の金の延べ棒を〇〇銀行の貸金庫に保管してあるそうです。その関係書類は書斎の机の…」 「ちょっと待って。お金の話はわかった。それより、どうして私は捨てられなければならなかったの?」 「うう~ん。そこは…説明するのは難しいですね。」 「難しいって。難しくても、あなたが説明できるなら説明してちょうだい。」 大根は、いきなり私をギュッと抱きしめた。 私が声を出そうとすると、大根は私をベッドに押し倒し、キスしてきた。 大根のキスは、意外にも気持ちよく、私は官能の赴くまま大根に体を預けてしまった。 大根はとても繊細に私のポイントを突いてきた。 『夫から、こんなことまで細かい情報を受け継いだのかしら?』 と思わずにはいられなかった。 朝から大胆にもベッドで愛を交わした私は、あらためて大根に頼もしさを感じ始めていた。 「かわいいですね。もっともっと感じさせてあげたいな」 大根は、片手で私の髪をかきあげながら、もう片方の手で胸を愛撫していた。 「お腹空いたわ。朝ご飯にしましょう。」 私は起き上がった。
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