彼女の証明

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 朝、まだ陽が昇らぬほどの時間に彼女は目を覚ます。  食パンを温めながら腸詰肉のスライスと鶏卵に火を通し朝食をいただく。  丁寧に食器を洗うと漆黒に彩られた衣装に袖を通してアジトを後にする。ここは誰にも知られてはいけない。  クライアントと折衝する合間を縫うように友人たちと食事をこなし仕事の合間に別の友人をお茶に誘う。  少し羽振りの良い町娘と殺人者。彼女は二重生活を華麗にこなしていた。 「アンタさあ、最近ちょっと変わったとこない?」 「そっかなあ? そんなことないよお」  疑惑の目を向けてきた旧知の彼女をのらりくらりと躱す。 「そうだって。前はもっとさあ……なんていうの?」 「あはは……うん、あーそっかあ」  彼女の表情を見ては私も察せざるをえない。  不審。このボクに不自然な変化を感じ取ってしまったのだろう。 「……あのね。実が相談に乗って欲しいことがあって」  ボクがこうして会う友人たちは、つまりみんな彼女の友人なのだから、出来ることならそっとしておきたかった。  でも勘付いてしまったのなら仕方がない。
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