抱擁

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俺はなおも食い下がった。 「… そう…?でもさ…さすがに俺の立場…で言うとさ…短い時間でもいいから…顔合わせっていうか…いきなり式で初めましては、まずいだろう…さすがに…」 「そっか… 確かにそう、だよね…わかった…お兄ちゃんに都合…聞いてみるね…。あ、…それとさ、ウチのお兄ちゃん、少し人見知りなところがあるから、そういう意味でも、あまり期待しないで…とりあえずもう少し時間ちょうだい…。」 「ああ… 頼むね…」 なんだろう…この感じ… 真由は少し、緊張しているように見えた。 まるで、俺と合わせたくないかのようだ… なんで…? 小さい頃から、とても優しい兄だったと話していた。 両親が亡くなってからは、真由の大学生活も含め、身の回りの面倒を見てくれたと…話していた。 就職して家を出てからは少し疎遠になったとは聞いていたが… 真由に対してはともかく、 よほど、他人に対しては気難しい男なのだろうか…。 とはいえ、顔合わせなしに…挨拶もなしに真由を妻にすることはできない…。 俺は真由の態度に少しの違和感を感じながらも、 デザートのケーキにフォークをゆっくりと突き刺した。
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