3.平凛の結婚式前日

1/2
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ

3.平凛の結婚式前日

 そんないきさつがあって通い始めた高校も、早や1年が過ぎようとしていた。  平凛も16歳となり、すぐにでも結婚をしたいと言っていたが、オレは春休みを利用しようと提案して、平凛は仕方なくそれに乗った形になった。  結婚式と簡単に言ってもやることが煩雑過ぎて、普通のサラリーマンと学生ではとても準備などできるはずがない。ももっちのツテでウエディングプランナーを頼み、平日には主にその人が動いてくれることになった。オレ達は、土日や休みの日を使い、衣装を選んだり、会場を探したり、式に呼ぶ親類の選定などをした。  平凛が高校生の16歳だということもあり、声をかける親類も良識のある人だけとした。  結局式と披露宴会場は、海の街の近くにある「ネスト」というホテルですることにした。平凛の実家から近いというのと、海沿いの奇麗な公園の中にあるからだ。式の前に集合写真を撮るということで、会場近くの「あかつき館」という施設の階段を借りた。建物の幅いっぱいの長さの階段がついているから、記念撮影にはピッタリの場所だ。  貸衣装や料理などは、平凛の選んだものをチョイスし、ウエディングプランナーが手配をしてくれた。案内状は全てをももっちが引き受けてくれたが、誰もがプロが作ったものと思っただろう。  オレは平凛にできるだけ思い出に残る式にしてあげたかったから、衣装替えも3回のお色直しをさせてやることにした。オレは2回で十分だけどな。  婚礼前日、オレ達は平凛の実家に泊ることにしたら、部屋まで同じになってしまっていた…。是真(これま)さんが前夜祭のような宴会を開いてくれて、ごちそうになることにしたが、きっと明日の披露宴で出てくる料理よりも数段豪華だろう。  是真さんはさんざんギターを弾いたあと飲みつぶれてその場で寝てしまい、メイドさん3人に抱えられての退場になった。 …その夜  オレは遅い風呂にゆったりと漬かっていた。露天風呂だ。もうメイドさんたちも寝ているだろうから、誰も入って来ないだろう。  「ポチャリ…」…誰かが湯舟に入って来た音がした。見ると後ろのライトのせいで逆光になって誰だかわからない。シルエットは若い女性のそれだった。ドキリとしてよく見たら、  「ダンナ様…」 と声をかけられた。 「なんだ、平凛だったのか。こっち来いよ」  オレ達は屋敷でも時々一緒に風呂に入っていたから、それほど恥ずかしがることもなく一緒に並んで入ることにした。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!