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「なあ平凛…こうやって空を見ていたら、オレらはちっぽけだよな…」
平凛も夜空を見上げて、
「そうでございますね、ダンナ様…」
と言った。
「オレな、時々思うんだよな。この広い宇宙の中に、オレ達と同じような人類が何兆人かそれ以上いると思うんだよな。その中でさ、この地球というちっぽけな星に生を受けてさ、虫でも動物でもなく「ヒト」として生まれて、さらにこの地球上でたった一人の相手と出逢える確率って、すごい数字になると思うんだよ…。
「…」
平凛はいつになく無口だった…。
その夜は二人で抱き合って寝ていたら、知らない間に朝になっていた…。
結婚式当日、朝食後に平凛が是真さんを訪ねると言うので、オレは遠慮して部屋で待つことにした。
「おじい様…よろしいでしょうか?」
「う…うむ、…入れ…」
是真の超絶和風な部屋に入るなり平凛は正座をし、三つ指をついて、
「おじい様、私は今日、嫁いでまいります。わずか16年間でしたが、私はおじい様に育てられ大きくなることができました…」
「ウ…ウム…(グシュ)」
是真は既に涙をこらえながら上向き加減でそう言った。
平凛の妹、汐音が生まれてすぐ、両親は海外赴任となってしまい、メイドがいるとはいえ、是真さんが一人で姉妹を育ててきたことになる。
そんな親代わりの是真だったので、感慨深いものがあった。平凛は続けて、
「私は岡野に嫁ぎますが、汐音が家を継いでくれるので、淋しくはないでしょう。それに私は、おじい様の言いつけを守り、これからも時々顔を出しますので、どうかご安心なさって下さいませ。今までのこと、大変感謝しております。本当にありがとうございました」
と深々と頭を下げた。
是真はそれを聞き終わる前に既に大泣きだったが、
「う…うみゅ…岡野殿を…(グシュ)…しっかり支えていくのじゃじょ…」
とそれだけ言うと、うつむいてしまった…。
畳に涙がボロボロと落ちた…。
平凛もつられて涙が頬を伝った…。
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