沈黙の金

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A「100万円寄付させていただきました。早く復興が遂げられることを祈っています」 B「売名かよ」 C「そういうあなたは寄付しないんですか。やらない善よりもやる偽善ですよ」 A(売名でも偽善でもないつもりですが……) B「俺? もちろん1000万寄付したけどなにか? こういうのは黙って行うもんだろ?」 C「でも、あなた、黙ってられませんでしたね。   それって売名ですよ」 B「はあ? 聞かれたから教えたまでなんだが?」 C「わざわざAさんよりも大きい金額を言うのがもうね。『寄付しました』で十分でしょう」 B「Aも金額を言っていたからだろうが!」 A(矛先が私に向いてきた。そうか、金額はNGなのか。今度から言わないように気をつけよう) C「でもそれって結局Aさんと同じ行動をしたってことですよね。売名ですよ」 B「じゃあ聞かせてもらうけどな、お前は寄付したのかよ」 C「それって答える義務ないですよね」 B「いや、あるね。『寄付してない』のだとすれば、あんたはやらない善人なんだよ。俺より劣るってわけ。『寄付している』と答えたなら、お前も売名行為をしたってわけ。お前さあ、人のこと批判しといて自分が傷つかないようにするのって卑怯に見えるんだけどさあ、そこんとこどうなん?」 C「はあ……そもそもあなたが売名だとか言い出したからでしょう?」 B「それはもう終わった話。俺は売名偽善野郎でOK。お前はどうなん?」 A(あぁ……私が余計なことを言ったばかりに不毛な争いが。猫のGIFでも貼って、癒しを与えなくては) …… 名もなきおじいさん 「はい……もちろん全額です……はい……老い先短いこともありますし……生きるのに最低限は残しておりますので……ええ……タンスの肥やしにするのももったいないでしょう……あの、名前は決して公開しないでくださいね……えぇ……いや、そんなカッコいい理由じゃないですよ……あんまり大きい金額だから、強盗に狙われるかもしれないでしょう? お金もないのに狙われたらたまったものじゃありませんから……いやいや、怖がりなもので――」
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