第一章 異臭の旅人

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第一章 異臭の旅人

 その青年はすれ違う人々の注目を集めていた。  漂う異臭。今にも死にそうな目。ボロボロの鎧と兜。剣を杖代わりのようにして歩いていた。  その街の名はプランティール。  道具屋、武器屋、宿屋はもちろん、カジノや闘技場まである大都市である。その西にあるルベーラや東のコリエのような田舎町とは比べ物にならないくらいの人でいつも賑わっている。  さらに北にあるドルマン城の統治下のため街中にはドルマン軍の兵士たちが常駐している。そのため、街の規模の割に犯罪は少ない。  住むにも立ち寄るにも、どちらにも適している街である。  戦士、武闘家、魔法つかい、僧侶、思い思いのパーティーを組んだ旅人たちが今日もこの街を訪れる。昼は装備を整え、夜は酒場で羽目をはずす。  そんな街で、先ほどのボロボロの青年は一人ぼっちで宿屋に入っていった。名をセボンという。  彼の運命はこの宿屋を訪れることで、大きく変わることになる。
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