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第三章 夜行と夜光
目が覚めると暗闇があたりを包んでいた。カーテンを開けてもそれは変わらなかった。部屋を出て薄暗がりの中、宿屋の入口にあった時計を見に行くと時間は夜中の一時四十五分を示していた。
人間は寝ようと思えば夕方でも寝れるし、起きようと思えば真夜中でも起きれるんだと感心した。
女将さんによると、ここからムーンライトまでは迷わずにいけば五分ほどで着くらしい。初めて行くので時間が倍かかるとしてもまだ余裕はある。開店まであと十五分あるのだ。
その間に、セボンは風呂に入って体中の垢を洗い流した。風呂場は電気をつけても暗かった。こんな暗い中湯船に入るのは初めてだったが変に落ち着く気もした。
最低限の服と装備をして宿屋を出る頃には時計は二時五分を示していた。大丈夫だ、まだ一時間近く店は開いている。
外は昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。街灯の光だけを頼りに目的の場所へ向かった。警備兵も見当たらない。カジノもあるらしいが、どこにあるのかわからない。
道中少し迷ったが、宿屋の女将に聞いていた広場の大きな噴水を見つけた。ここが目印らしい。その噴水に向かって左の小道に入ると、右手に薄っすら明かりの灯ったその店はあった。
小さな木の看板にムーンライトと書いてある。おそらく、あらかじめ調べておかないと、通りかかっても気付かないんじゃないだろうか。そう思ってしまうほど、店は開店している雰囲気がなかった。周りの武器屋やアクセサリーショップの建物は全て真っ暗闇だが、この店の暗さもそこまで変わらなかった。
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