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僕もその時一人だった。募金活動週間のため、各クラスから学級委員が二人ずつ募金箱の番をすることになっていたのだが、相方の女子はとうとう最後まで姿を現さなかったのだった。
募金箱の番なんて、大した仕事ではない。そもそも募金なんて生徒だけではほとんど集まらない。友だちが多ければまだしも、僕のようなモブ中のモブが座っていたって、春の通り雨ほどにも影響しないのだ。欠席した女子は、正しい判断をしたと思う。
でも、こんなかたちで取り残されるのは、正直ゆううつでしかなかった。
押し付けられた感。都合よく放置された感。人として、扱われていない感。
いつも、こうなる。
なぜだろう。
地味で、あまり発言しないというだけで、どうしていつもこうなるのだろう。
「ここにお金を入れてください」
この貼り紙と、この僕と、一体どちらの価値が高いのだろうか。
あまりにも素通りされるので、恥ずかしくてだんだんまともに座っていられなくなってきた。僕は生徒たちから目をそらし、ぼんやりとエントランスの向こうの雲を眺めていた。
でもその日は、それでよかったのだ。結果的には。
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