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だって、あの人気者の黒野くんが、僕に気づいてくれた。バカ正直にも福はある。
黒野くんは僕に近づき、しばらく僕を見つめて、
「……あれっ、水口?」
と言ったのだった。
「何してんの?」
「えっ……ぼ、募金だけど」
「あ、そっか。はは」
さらっと笑う。うちわであおいだように、何の湿りもない笑いだ。僕もあんな風に、笑ってみたい。
「水口って、がんばりやさんだな〜……」
黒野くんはそう言って、さっさと立ち去って行った。
かと、思うと、戻ってきて。
からん
百円玉を一枚、募金箱の中に落としたのだった。
「がんばりやさんだから、あげる」
そう言って、黒野くんはにっと笑ったまま、何秒か停止した。ものすごく、ものすごく僕の顔を見ている。何かのチャレンジだろうか。
みるみる僕の顔は赤くなる。
「……じゃあ、また後で〜」
のんびりと黒野くんは言った。そして、ゆうゆうと立ち去っていった。
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