1.募金箱

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 だって、あの人気者の黒野くんが、僕に気づいてくれた。バカ正直にも福はある。  黒野くんは僕に近づき、しばらく僕を見つめて、 「……あれっ、水口?」  と言ったのだった。 「何してんの?」 「えっ……ぼ、募金だけど」 「あ、そっか。はは」  さらっと笑う。うちわであおいだように、何の湿りもない笑いだ。僕もあんな風に、笑ってみたい。 「水口って、がんばりやさんだな〜……」  黒野くんはそう言って、さっさと立ち去って行った。  かと、思うと、戻ってきて。  からん  百円玉を一枚、募金箱の中に落としたのだった。 「がんばりやさんだから、あげる」  そう言って、黒野くんはにっと笑ったまま、何秒か停止した。ものすごく、ものすごく僕の顔を見ている。何かのチャレンジだろうか。  みるみる僕の顔は赤くなる。 「……じゃあ、また後で〜」  のんびりと黒野くんは言った。そして、ゆうゆうと立ち去っていった。
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