13.卒業式

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 僕はもう一度振り返った。  空の下、静かに校舎はたたずんでいる。  深く息を吸ったら、なんとなくせいせいして、きっぱりとそこを歩き去る、ことができる。  ……と、思ったのだが。  やっぱり。  と、思って、僕は引き返した。  一緒に校門を出た生徒がたくさんいたわけじゃないのに、戻ってみると校内は閑散としていた。部室とか、どこか別のところにいるのだろうか。  教室に、戻ってみる。  誰もいなくなっていた。  こっそり、僕は中に入った。  僕たちがそこにいたという痕跡は、もう何もなくなっていた。カバンも。引き出しの中も。壁に貼りっぱなしだったいつもの時間割表なども全てはがされ、かわりにいろいろなピンクの桜がかざられていた。  ただ、黒板に書き尽くされた落書きだけが、そこに高校三年生の僕たちがいたことを、物語っていた。雨上がりのグラウンドに残った足あとみたいに、乱暴に。  黒野くんも、ここに何か書いたのかな。ぐちゃぐちゃになっていて、全然分からない。スマホで写真を撮っておいた。あとでゆっくり見るかもしれないから。  僕は廊下の方をうかがった。本当に、人の気配がしない。
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