13.卒業式

4/5

35人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ
「じゃあさ水口、かわいそうだからもらってやるよ、第二ボタン」 「え、なにそれ」 「第二ボタンっていっても、ブレザーだけどな。お前どこねらってんねんっていう」 「はは……本木くんの関西弁がうつってるよ」 「あとさ、これ」 「え?」 「おれの第二ボタン」  手のひらに、黒野くんのボタンがおさまる。 「うわあ、何か……」 「何?」 「……何か」  めっちゃ、すきってこと?  と思って、 「第二ボタン交換するってこと?」  と、はぐらかした。つもり。 「あっ、そうか。じゃあこうしよう」  と言って、黒野くんはおもむろに僕の首元から、するり、ネクタイをほどいた。 「あっ」  と、変な声になってしまった。黒野くんの指がちょっと、僕の首にさわったのだ。 「……おれネクタイもらうわ。ていうか。あれ。赤くなっちゃって」  僕は下を向いた。だめだ、このままだと、体が反応してしまう。 「ははっ、どうした、水口」 「な、なんでもないよ」 「ほんとに? ねえ何考えたの、今」 「いや、何も、ちょっと、こそばかっただけ……」 「ふーん? へー? まじ、かわいー。心配しなくてもこれ以上脱がさねーし、はは」
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加