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「ありがとう。おれも、水口のこと、すき。これからもずっとすき」
「あ、ありがとう、ぼくも……ずっとすき、だ、よ」
「はは、うれしい、もっと言って。……そうだ。いいこと思いついた」
「え、何?」
「水口。おれたちさぁ、一緒に暮らさない?」
まるでプロポーズみたいなことを、黒野くんは言うのだった。明日コーヒー飲みに行かない? そんなノリで。
結局、2DKの古いマンションにした。
引越し当日は、家族と、あと本木くんが手伝いに来てくれた。実は本木くんも、春から京都の学生なのだ。大阪におばあちゃんの家があるので、そこから通うのだと言う。
ピザを食べて、「うまいことやりや」と言って、本木くんは帰って行った。
まだ陽は沈んでいなかった。でもなんとなく、夜が忍び寄る気配がある。この部屋で、僕たちが初めて迎える夜。
二人、並んで寝転がって、一つの天井を見上げている。
手をつないだ。
黒野くんが、眠たそうに僕を見ている。まるで夜の夢をつかさどる悪魔に、ひきずりこまれようとしているかのように。
顔を近づけて、唇と唇をひっつけた。
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