14.合格発表

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 黒野くんは、こういう時にいつも不安そうな顔をする。迷っている。困り果てている。まるではじめて子どもを産み落とした母親のように。  それは、僕だけが知っている表情なのかもしれない。なんて思うと、いとおしくなる、もっと。 「もう赤くなったりしないんだな」  と、黒野くんは言った。 「最初は、すぐ赤くなっていたのに」  耳をつまむ。 「……うん、多分もう大丈夫だよ」 「そっか」 「黒野くん。おれたち、ずっと一緒に暮らせるといいね」  何に酔っているのか、するすると言葉が出てきた。  当たり前か。ずっと夢に見てきた風景を、話すのだから。  徐々に部屋が暗くなる。 「ずっと?」 「うん。ずっと。これから、どこに行っても、どんな旅をしても、必ずここへ帰ってくるんだ、おれたち。そうなれたらいいな」 「……そうだね。うん。そうしよう。ていうか、とりあえず京都観光だな。お寺とか神社とか、いろいろ行きたい」 「うん」 「奈良の大仏も」 「行こうね」 「うん」  楽しみすぎて、感極まった僕たちは、ぎゅっと抱きしめ合った。日が暮れて、夜が深くなっていく。
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