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女の子のパンツの中を想像したり、テスト中になんとかカンニングができないかと策を練ったり、誰よりも一番になりたいとか、あんな足の速いやついなければいいのにとか、そんなことをさらけ出したら、絶対に嫌われる。ばかにされて、排除される。
思いやりのないやつだ。
やさしくないやつだ。
人のことが考えられないやつだ。
普通のことが、考えられないやつだ。
そう、言われて。
僕は、この社会に属していたい。
人として生きていたい。
息を殺していてもいいから、とりあえず存在していたい。
だから僕は、息を殺す。
息を殺すと、のどが詰まる。体中が緊張して、耳の先まで赤くなる。
それが、僕だ。
先生には申し訳ないが、僕にさらけ出せるものはといえば、それくらいしかなかった。
その僕の、一番さらけ出している部分に、黒野くんはすぐに気づいた。
「耳赤いよ」
と、急にとなりに黒野くんがいたのだ。
体育の授業で、ハードル走の練習をしていた。班行動のはずが、黒野くんはひとり色々な班に割り込んで、好き勝手にしゃべったりハードルを飛んだりしていたのだった。
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