37人が本棚に入れています
本棚に追加
と笑いながら言ったものの、内心むかむかしていた。緊張してるとからかっておいて、さらに実力の差を見せつけるなんて、一体どういう了見なんだ。
黒野くんは急に僕の耳を引っ張った。
「まだ赤い」
「……やめてよ」
振り払う。
すると、黒野くんはぐいっとまた体を寄せてきて、僕の顔をのぞき込んだ。
そして、
「何、はずかしいの?」
と聞いてきた。
僕はまたさらにカッとなった。頭まで熱い。怒るところだよな、これ、もう、怒っていいよな?
でも、黒野くんは
「かわいい」
と、続けた。
「あ、ごめん、言っちゃった。忘れて」
黒野くんはははっ。と、また例のように笑ってどっかへ行こうとしたけれど、また戻ってきて、
「あ、やっぱうそ。忘れなくていい。おれ、水口のこと、すきかも」
と、言ったのだった。
グラウンドの最果て。ハードル走の、ゴール地点で。
最初のコメントを投稿しよう!