2.ゴール

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 と笑いながら言ったものの、内心むかむかしていた。緊張してるとからかっておいて、さらに実力の差を見せつけるなんて、一体どういう了見なんだ。  黒野くんは急に僕の耳を引っ張った。 「まだ赤い」 「……やめてよ」  振り払う。  すると、黒野くんはぐいっとまた体を寄せてきて、僕の顔をのぞき込んだ。  そして、 「何、はずかしいの?」  と聞いてきた。  僕はまたさらにカッとなった。頭まで熱い。怒るところだよな、これ、もう、怒っていいよな?  でも、黒野くんは 「かわいい」  と、続けた。 「あ、ごめん、言っちゃった。忘れて」  黒野くんはははっ。と、また例のように笑ってどっかへ行こうとしたけれど、また戻ってきて、 「あ、やっぱうそ。忘れなくていい。おれ、水口のこと、すきかも」  と、言ったのだった。  グラウンドの最果て。ハードル走の、ゴール地点で。
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